不動産業界の将来性は?現状と今後の課題について解説

不動産業は衣食住のうち「住」の分野を担っている業界であり、需要がなくならないといわれます。

一方で不動産業界ではIT化の遅れや空家問題など改善していかなくてはいけない課題が山積みです。不動産業を営んでいる方は「不動産業界の将来はどうなってしまうのだろう」と不安を感じることもあるでしょう。

そこで今回は、不動産業界の将来性というテーマで、現状から課題、今後の動きなどを詳しく解説していきます。この記事を読めば不動産業界の将来についてイメージしやすくなるでしょう。

不動産業界の現状

まずは不動産業界の現状を市場規模と法人数、新型コロナウイルスによる影響という三つの観点から解説していきます。

不動産業界の市場規模

  2015 2016 2017 2018 2019
売上高 39.3兆 42.9兆 43.9兆 46.5兆 45.3兆
増加率 6.5% 9.1% 1.0% 7.1% -2.5%

出典:法人企業統計調査|財務省

上の表は財務省の調査結果をもとに作成した不動産業の売上高と対前年の増加率の推移です。
2015年から2018年にかけて、業界の売上高は拡大し続けています。2019年度には若干減少していますが、これは他産業の多くも減少していることから、2020年初期に感染が広がり出した新型コロナウイルスの影響だと推測できます。

不動産業の法人数

不動産業の法人数

出典:2020 不動産業統計集(3月期改訂)|不動産流通推進センター

上の図は不動産流通センターが2021年3月に発表した、不動産業の法人数推移です。

平成11年には法人数が約26万件であったのに対し、平成30年には約34万件に増加しています。また、平成30年における不動産業の法人数は全産業のうち12%に上ります。
不動産業の法人数が増加しているのに対して、建設業や製造業といった業界では法人数が下降傾向にあるというのもチェックしておきたいポイントです。

出典:2020 不動産業統計集(3月期改訂)|不動産流通推進センター

また、上の図は不動産業における倒産件数推移です。

若干の波はありますが、平成21年と比べると平成31年に倒産した件数は約半分まで減少しています。法人件数が増えていて倒産件数が減っているという事実により、一見、業界の今後は明るいと思うかもしれませんが、同調査で発表されている事業所あたりの従業員数は、平均3.6人と非常に少ないです。

つまり不動産業では、5人以下の小規模法人が大半だということが分かるでしょう。

不動産業界にコロナの影響はあった?

さまざまな業界に経済的な影響を与えた新型コロナウイルスですが、不動産業にはどのような影響があったのでしょうか。

出典:コロナ禍における不動産業のアンケート|東京商工リサーチ

上図は、調査会社の東京商工リサーチ社が発表した調査結果からの抜粋です。同社は2020年2月から2021年4月(全15回)まで、不動産業に関わる方にコロナ禍での意識調査を実施しています。

調査内容によると2021年4月のアンケートで「コロナの影響を受けた」と回答した不動産業者は220社中162社の73.6%に上るとのことです。
2020年2月に「現時点でコロナウイルスによる影響が出ている」と回答したのは全体の15.1%であったため、不動産業は他の産業と比べて影響がないと思われていました。

しかし、2020年3月以降、建築資材の入荷遅れによる物件引き渡しの遅延や、賃貸業者が家賃の減額や支払い猶予を命じられた等による影響が、少しずつ出始めています。

2021年4月の調査では、現時点ではコロナウイルスによる影響を受けていないと回答した企業のうち、「今後、影響が出る可能性がある」と答えた企業は約20%であり、今後もコロナウイルスによる影響は不動産業を脅かす可能性が示唆されています。

また、2021年4月の調査で「廃業を検討する可能性があるか」という質問に「ある」と答えた企業は不動産業者全体の7.6%おり、全産業の平均である7.3%を上回っています。

コロナウイルスの影響により、不動産業界でも営業時間の短縮やテレワークの導入などが強いられています。結果として、業務が停滞し、業績が鈍化している不動産業者は少なくないといえるでしょう。

不動産業界の課題

不動産業界は、どのような課題を抱えているのでしょうか。今回はその中でも特に深刻な三つの課題を紹介します。

人口減少と高齢化社会

出典:総務省統計局「国勢調査」「人口推計」

上図は、総務省が作成した総人口の推移と若年層及び高齢者層が占める割合のデータです。
総人口に関しては2008年をピークに減少傾向にあります。また、それに対して65歳以上、75歳以上が全体に占める割合は平成元年から毎年上昇しており、平成30年には全人口の約42%に上っています。

総人口の減少と高齢化はますます進んでいくことが予測されており、2035年には2005年の人口から1,700万人近く減るであろうという観測もあります。

人口の減少は、人々の住環境を扱う不動産業に多大な影響を与えます。特に都心部と地方では人口の二極化が進んでいて、特に地方では空家の増加や新築物件への需要が減ることが懸念されています。

2022年問題

農業以外の利用が制限されていることにより、税制優遇の対象となっている生産緑地が、30年の期限を2022年に迎えることになります。これにより、2022年以降は税制の優遇が効かなくなることで、所有者の多くが生産緑地を宅地に転用して売りに出すことが予測されています。その結果、市場は土地の供給過多状態となり、地価が暴落するのではないかと危惧されているのです。この一連の流れを2022年問題といいます。

生産緑地の8割は首都圏、近畿圏、中京圏であり、不動産市場へのインパクトも非常に大きくなると予測されています。

人材不足問題

不動産業界が抱える課題として人材不足問題も無視することはできません。

出典:2019年『企業の人材不足』実態調査|エン・ジャパン株式会社

上図は、大手求人サイトを運営するエン・ジャパン社が当サイトを利用している企業を対象に「人材不足の状況」についてアンケート調査を行った結果の抜粋です。

「現在、人材が不足している部門はありますか?」という質問に対し、「ある」と答えた「不動産・建設関連」の企業は91%に達し、「IT・情報処理・インターネット関連」「メーカー」と並び業界一位となりました。

不動産業で人材不足が発生している理由は主に二つあるでしょう。

一つは、法人数が増加しているため、各法人が抱える人材自体は少なくなるからでしょう。不動産業への入職者は退職者に比べて多いといえますが、法人数も増えているため、各法人の人材不足を解消しにくくなっているといえます。これは先程説明した通り、不動産業者の平均従業員数が3.6人という事実からも分かります。

もう一つの理由として、不動産業では長時間労働が慢性化していることが挙げられます。業態にもよりますが、不動産業では必要書類も多くその準備に時間がかかったたり、現場に足を運ぶ機会も多いといえます。
これらの業務を分業化することで長時間労働の改善につながりますが、そもそもその人材がいないのです。

また、不動産業は他の業種と比べ残業時間が長いことも特徴です。これにより負担を感じ他業種へ転職する人も少なくありません。

不動産業界の将来性は?

不動産業界は上で述べたような課題はもちろん、属人性が高く紙の文化が根強く残っている業界です。そんな不動産業界の将来はどうなるのか、三つの視点から解説していきます。

不動産業のIT化・DXの動き

不動産業を営むにあたって、今後は人材不足問題もあることから少人数で効率的に業務を回していく必要があります。業務効率化を進める上で無視できないのが業務のIT化です。

例えば、IT重説やVR内見のツールを導入することによって、元々かかっていた業務負担が減る可能性が高まるでしょう。また、これらのツールを導入することによって、顧客側も部屋探しから入居の手間を省くことができ、業者と顧客どちらにもメリットがあるといえます。

更に、後述するブロックチェーンやスマートコントラストが、不動産業で活用できるようになれば更に業務効率が良化すると同時に、業界の発展にもつながるといえます。

大切なことは、このようなIT化のトレンドに対して敏感になり、取り入れようとする姿勢でいることです。IT化の流れを無視してこれまでの手法で不動産業を営むのも良いですが、今後も業界で生き残れるという保証はないかもしれません。

ブロックチェーン技術の活用

ブロックチェーンとは、世界にあるさまざまな取引をデータ化して記録していくことです。取引データは暗号化されており、複数の参加者が管理するという仕組みからセキュリティ能力にも期待されています。

ビットコインに代表される仮想通貨システムには、ブロックチェーン技術が利用されています。

ブロックチェーン技術は不動産業においても活躍するのではないかといわれています。ブロックチェーンを不動産業で利用することができれば、不動産取引に関する一連の流れを所定のシステムで管理し、一括サービスとして提供することが可能になります。

また取引のデータは改ざんされにくいというメリットもあり、不動産がらみでの不正やトラブルを阻止することも期待できるでしょう。

ただし日本の場合は、宅建業という法律があります。2021年現在の宅建業のルール下においてはブロックチェーンを不動産業界で活用することは難しいといわれているため、今すぐに何かが変わるということはなさそうです。

住まいへの需要は変わらない

人材不足など暗いトピックが多くなりましたが、不動産への需要は住む人がいる限りなくなることはないでしょう。

都市部と地方で人口が二極化していることや、コロナ禍の影響で住まいへのニーズが変化してきていることに対しては、向き合う必要があります。その上で、時代に合った不動産への需要にアンテナを張って、アプローチしていくことが今後は求められていくでしょう。

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