不動産取得税は会社分割による移転でもかかる?

オフィスビルと税金

会社分割とは、1つの会社の事業の一部を他社に移転させるM&A手法のことをいいます。会社分割に際しては、法人税や登録免許税の他に、不動産取得税が、課税対象になる可能性があります。

今回は、会社分割において、そもそも不動産取得税とはどのようなもので、どのような場合に不動産取得税が発生するのか、発生する場合の税率や軽減措置はどのようであるかについて、解説していきます。

・不採算事業を切り離すため、会社分割を検討しているが、税金も含め費用が膨大にならないか不安だ
・当社のケースでは、不動産所得税が課税されるのか、簡単に理解したい
・不動産所得税の軽減措置などはないのだろうか?

そのような不安や疑問にお答えしていきます。

会社分割で不動産取得税がかかる?

会社分割で不動産が移転する場合とは

会社分割では、会社における一部の事業に関わる権利義務を他社に移転させることになりますが、切り出す事業に関連する不動産がある場合など、事業だけでなく不動産に関わる権利義務も移転させる必要が生じるケースがあります。例えば、食品事業を他社へ移転させる場合であれば、工場の土地や建物を他社に移転させる必要があるでしょう。

不動産取得税とは

不動産取得税とは、土地や建物を購入したり、譲り受けたり、また新たに建物を建築した場合に、不動産を取得した者に対して課される税金のことです。固定資産税のように継続的に課税されるものではなく、不動産取得時に、一括で課税されます。

会社分割をすると不動産取得税はかかる?

会社分割をし、一部の事業を他社に移転させ、その事業にひもづく不動産をも移転させる場合、全てのケースで不動産取得税がかかるわけではありません。

原則として、事業を譲り受けた会社側に不動産取得税が発生しますが、不動産取得税が非課税となる例外的な状況も存在します。次章以降では、どのような場合に不動産取得税がかかり、どのような場合には課税されないかについて解説していきます。

会社分割で不動産取得税がかかるケース

ここでは、会社分割で不動産取得税が生じる場合について解説します。なお、実務においては個別に考慮すべきことが多々あるため、今回は概要のみをお伝えします。

どのような場合に不動産取得税がかかる?

基本的に、税金は利益が発生する場合に課されるものです。会社分割が、事業を拡大させるなどビジネスでの利益の拡大を目指す目的でなされ、その中で不動産が取得される場合は、税金が課されます。

一方で、会社分割がグループ企業の再編を目的として行われ、不動産の移転がビジネス上での利益の拡大を目的とせず、形式的である場合(適格会社分割)、不動産取得税が非課税となります。

具体的にどのような要件を満たす場合に非課税となるかは後述しますが、非課税要件を全て満たさない限り、基本的には会社分割において不動産取得税は発生します。

不動産取得税の税率は?

不動産取得税は、原則として、対象となる不動産の固定資産評価額の4%が課税されます。

例えば、1000万円の評価額の不動産を取得する場合は、40万円の不動産取得税が課されます。

固定資産評価額とは、時価や購入価格とは異なり、土地や家屋などをそれぞれどう評価するかを定めた「固定資産評価基準」に基づいて、各地方自治体が個別に決める評価額のことです。

不動産取得税の軽減措置は?

不動産取得税率は、基本的には4%ですが、2024年3月31日までに取得した住宅家屋・土地を対象に、不動産取得税を3%とする軽減措置が取られています。工場建物など、住宅でない建物には、4%の不動産取得税がかかります。

また、前述の通り、基本的に不動産取得税は固定資産評価額に対して計算されますが、現在は、不動産が2024年3月31日までに取得した宅地であれば、固定資産評価額の2分の1の額面に対して税金が計算されるという特例が存在します。

会社分割で不動産取得税が非課税のケース

繰り返しになりますが、グループ再編など、ビジネスでの利益の拡大を目指す会社分割ではなく、不動産移転も形式的なものである場合、不動産取得税は非課税となります。

具体的に、不動産取得税が非課税になるための要件は下記の通りです。

分割対価要件

分割対価として、分割承継法人の株式以外の資産が交付されないことが必要です。
分割対価とは何かについてを説明します。会社分割では、一方の会社の事業を他社の会社に移転させます。その際に、事業を手放した会社は、事業を承継した会社より、対価を受ける場合があり、それを分割対価といいます。

分割対価として、株式以外の金銭等の交付がある場合、グループ再編ではなく、ビジネス上の売買と見なされ、課税対象とするべきと判断されてしまうことからも、この要件が存在します。もちろん、分割対価が存在しない場合もあり、その場合もこの要件を充します。

主要資産等引継要件

分割により分割事業にかかる主要な資産及び負債が分割承継法人に移転していることが必要です。

移転事業継続要件

分割に係る分割事業が分割承継法人において分割後に引き続き営まれることが見込まれていることが求められます。

従業者引継要件

分割の直前の分割事業に係る従業者のうち、その総数のおおむね80%以上に相当する数の者が分割後に分割承継法人に従事することが見込まれていることが必要です。事業に携わっていても、下請先の社員は従業員に含めないなど、どこまでを従業員に含めるかについては、個別ケースにおいて確認が必要です。

按分型要件

これは、分割型分割の場合のみに求められる要件ですが、分割対価である株式が分割法人の株主等の有する当該分割法人の株式の数の割合に応じて交付されるものであることが必要です

会社分割は、対価の受け取り方で、「分社型分割」と「分割型分割」に分けられます。分社型分割とは、分割の対価として、会社あてに株式を渡す場合をさします。一方で、分割型分割とは、分割の対価としての株式を、会社宛てではなく株主宛てに渡す形態をさします。

不動産取得税非課税申告書と添付書類

上記の全ての要件を満たす場合、都道府県に対して、不動産取得税非課税申告書を添付書類とともに提出し、承認されると、不動産取得税が非課税になります。添付書類には、下記が必要です。

  • 分割について承認または同意があったことを証する書類(議事録等)
  • 分割の内容がわかるもの(分割計画書、分割契約書)
  • 履歴事項全部証明書(両社とも)
  • 定款(両社とも)
  • 分割法人から承継する権利義務に関する事項を確認できる書類
  • 分割事業に係る従業者のうち、分割承継法人に従事する人数がわかる書類

不動産取得税は、都道府県が課税主体となる地方税です。法律に即した課税の判断は、都道府県ごとに行われるため、同じケースでもA県では非課税、B県では課税となるなど、若干の解釈の違いが生じることに注意が必要です。

専門家に相談してみよう

ここまで、不動産取得税の概要、軽減措置、非課税要件についてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?

会社分割手続きを本格的に検討する場合や、手続きや費用を精緻に把握する場合などは、個社の事情や状況に併せた判断が必要ですので、税理士や司法書士、金融機関の担当者、M&Aアドバイザーなどの専門家に相談してみてください。

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